こんにちは、イバスタです。
今回はこだわりが強い患者さんに対して、減薬を提案し成功した例を記事にしました。
一例として参考にしてね。
ことの発端としては肺疾患で入院した患者さんの持参薬を確認していた時のことでした。
・眠れない時にはエチゾラム
・毎食後にジアゼパム
いやいやこれ飲みすぎっしょ??
というようにベンゾジアゼピン系(BZ系)の薬を色々なクリニックからもらっている患者さんだったんです。
それで経緯を聞いてみると
今はこれでぐっすり眠れているわよ
ぐっすり眠れているとは話されても、薬の持ち越しなどが気になったので、何度か患者さんのところに行って症状を確認してみました。
特にぼーっとしている様子もないし、日中はピンピンに散歩したりと副作用が見られませんでした。
とは言ってもね、こっちとしては心配だからやっぱりベンゾジアぜピン系は減らしたいわけですよ。
コンテンツ
患者さんに減薬を提案してみた
睡眠薬を複数内服しているので患者さんに減薬を提案をしてみました。
睡眠のお薬が多すぎるので減らしてみませんか?
これで眠れているからこのままでいいわよ
そうですよね〜
あっさりと却下…
話を聞くと、この患者さんは、かかりつけ医(Aクリニックとします)の先生に何度も病気を見つけてもらったようで、処方されている薬にも絶対的な信頼を寄せていました。
他にも外用薬の使い方にもこだわりがあり、薬の飲み方に関してはご自身の考えを持つ患者さんでした。
寝れてるんだから、そのままでよくないか?
この患者さん寝れているんだから、わざわざ減らす必要ないんじゃない?
眠れているのは事実ですし、ここに至るまでに薬の調整も何度かしていたんですけど、やっぱり漫然投与は避けたいわけです。
薬を減らすことができるのであればそうしたい。
でも退院して外来受診になっちゃうと経過も追えないし、薬を減らすチャンスはないと思うので、今回の入院をきっかけに眠剤を減らせればと思ったわけです。
またPMDAからも
用量を遵守し、 類似薬の重複処方がないことを確認してください
PMDAからの医薬品適正使用のお願い
ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性についてより引用
このように類似薬の重複投与や漫然投与はベンゾジアゼピン系の依存形成につながるので、薬が減らせることによって離脱症状によるリスク、例えば転倒による骨折など防げるわけですよ。
どうやって薬を減らすことに成功したか
今回の患者さんでポイントだったのは、信頼しているA医師の処方に介入をしないこと。
ならばその他でかかっている医師から処方されている睡眠薬を減らしてみようと考えたんです。
Aクリニックのお薬は減らしません
素晴らしい先生ですから
その代わりBクリニックの先生のお薬を全部ではなく1個だけ減らしてみませんか?
B先生も患者さんのために一生懸命考えて出してますから
もし睡眠のお薬が1つでも減ってたら喜びますよ
確かにそうよね
減らしてみようかしら….
ではリルマザホンを減らしてみましょうか?
いきなり減らしてしまうと、眠れなくなったりするので
トラゾドンを代わりに入れておきますね。
翌日
昨日は寝れましたよ
よかったですね。
では可能であれば次の薬も減らしてみましょう。
結局、リルマザホン1剤だけの減薬でしたが、その後も患者さんは不眠になることはなく、退院されていきました。
なんで一気に減薬しないの?
一気に減薬してしまうと離脱症状が出てしまうからです。
離脱症状というのは、不眠や焦燥感、悪心など薬が切れた時に、投与前にはなかった症状が出現する状態のことを示します。
PMDAより
投与中止時は、漸減、隔日投与等にて慎重に減薬・中止を行ってください
PMDAからの医薬品適正使用のお願い
ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性についてより引用
具体的には2〜4週間ごとに25%ずつ減らしてきます。
もしも不眠になったら元に戻します。
また消失半減期の長い薬に一旦切り替えます。これを置換法と言うのですが、消失半減期が短い薬は離脱症状が起きやすいからです。
またはタンドスピロン、カルバマゼピン、SSRI、ミルタザピン、トラゾドンに切り替えます。
今回の患者さんにはリルマザホンからトラゾドンに切り替え提案を医師へしました。
この状態でもしっかり眠れるのであれば、次のステップとして残っている他のベンゾジアゼピン系を切り替えるか、トラゾドンを減量していきます。
このように急にやめてしまうと離脱症状が出てしまうので、ゆっくり時間をかけて患者さんの様子をみながら減らしていくのがベンゾジアゼピン系睡眠薬のベストな減薬方法です。
こだわりが強くないところを探してアプローチするのがいいかも
今回はこだわりの強い患者さんに対して減薬が成功した例について書きました。
患者さんに減薬の相談するときに重要だったのは、患者さんにとってこだわりがある部分は同調しつつ、他のところをアプローチするということです。
必ず最善手が最もいいわけではないということです。
なぜならそれが患者さんにとっては最善手ではないからです。
最善手でも失敗することは当然あります。
目的は減薬を成功することですから自分が考える最善手ではなく、患者さんにとっての最善手であることを意識していきたいですね。
以上です。