残薬が生じてしまう5つの理由【飲み忘れが全てではありません】

こんにちは、イバスタです。

薬の残りは残薬(ざんやく)と呼ばれ、社会問題になっています。

薬剤師が関与した残薬削減効果の額は、100億円~6500億円と幅があった。

医療保険財政への残薬の影響と
その解消方策に関する研究(中間報告)

薬剤師の働きにより、数百億〜数千億円規模の削減効果があるという報告があります。

国としても毎年42兆円規模の医療費(「平成30年度 医療費の動向」について)がかかっているわけですから、なんとしても医療費を減らしたいでしょう。

入院してくる患者さんには、しっかり内服されている患者さん、大量に残薬が残っている患者さんがいらっしゃいますね。

この違いは「患者さんの飲み忘れ」だけで片付く問題ではないと思っています。

過去に担当した患者さんでこういう方がいらっしゃいました。


イバスタ
イバスタ

こんにちは!
お薬が余ってますが、どうかしましたか?

患者さん
患者さん

ちゃんと飲んでいたんだけどな…..
わしもなんで余ったのかよくわからんのだよ〜

イバスタ
イバスタ

じゃあ一緒に調べていきましょうか?


このように、しっかり飲んでいたのにも関わらず、本人も原因が分からず残薬が生じてしまった例が何件もあります。

今回は飲み忘れ以外で残薬が生じる理由について解説していきます。

この記事では、飲み忘れ以外の残薬が残る理由について知りたい方に向けて、病院薬剤師からの視点で解説する記事です。

では早速いきましょう!

患者さんの飲み忘れ以外で残薬が生じる理由

残薬が生じる原因として薬剤師がはじめに思いつくことは、患者さんの飲み忘れという理由ではないでしょうか?

しかし、患者さんのお薬手帳を確認したり、お話を詳しく聞くと、必ずしも飲み忘れだけではない理由が存在しています。

では患者さんの飲み忘れ以外で残薬が起きる理由を5つ挙げます。

飲み忘れ以外で残薬が生じる理由

①常用薬を入院中に持参されない

②残薬調整という言葉を知らない、もしくは言い出せない

用法用量の変更や一包化になっている薬の処方変更


④患者さんのライフスタイルに合わせた用法になっていない

⑤自己中断してしまう

以上5つの理由について説明していきます。

常用薬を持参されないため、入院中に残薬調整ができない

患者さんの退院が決まった時には、次回外来まで退院処方薬が処方されます。

もしも患者さんが常用薬を入院中に持参した場合。

錠剤がPTP包装の状態であったり、DO処方(入院時と同じ処方)であれば、次回外来まで残薬調整を行うことができます。

一方で、患者さんが常用薬を入院中に持参しなかった場合

自院で処方されている薬なら、電子カルテ上で残薬を確認できると思いますが、他病院からの処方薬を正確に確認する方法はありません。

そのため、こちらから次回外来まで一度退院処方として出すことになるため、結果として残薬になってしまいます。

患者さんから聞いた錠数での残薬調整をすればいいのでは?と思うかもしれません。

しかし、退院して患者さんが薬の残りを確認したところ、全く残っていなかった、期限が切れていたといったリスクがあるため、退院後は保険薬局で残薬調整をお願いすることにしています。

患者さんが残薬調整という言葉を知らない、言い出せない

入院患者さんやご家族で多いのが、残薬調整という言葉を理解されてなかったり、医師や薬剤師に言い出せない場合です。


残薬調整しましたけど、まだ薬が残っています。

次回の処方箋を貰った時には、保険薬局さんで薬の数合わせをしてくださいね

患者さん
患者さん

(早く退院したい..)

わかったわかった、残薬調整ね!

(残薬調整? 言わなくても薬局の薬剤師がわかるだろ…)


繰り返し説明を行ったとしても、患者さんだけでなく、ご家族にもよく理解されないことがあります。

また残薬調整について理解していても、医師や薬剤師に申し訳なくて言い出せない場合があります。

このツイートでもあるように怒られそうだとか、飲んでいないことを知られたら恥ずかしいなどの理由で言わない方もいますので、徐々に残薬が増えていくことになります。

こういう場合もありますで、お薬手帳に「残薬調整済み、残薬がまだ残っているので、次回処方箋受け取り時、残薬調整をお願いします」と記載しておきます。

過去に入院されてきた患者さんには、かかりつけの医師や薬剤師に言い出すのが申し訳なくて、最終的にダンボール一杯になるくらい残薬を持って持ってこられた方もおりました。

ダンボールで持参薬を持ってくる患者さんもいる

中には、何ヶ月も前に処方された薬剤や吸入薬が入っており、残薬調整ができずにいたのかと思います、こちらで可能な限り残薬調整は行いました。

用法用量の変更や一包化になっている薬の処方変更

一包化された薬のイラスト

用法用量の変更や一包化になっている薬の処方変更は残薬になる原因になりやすいです。

例えば

アムロジピン5mg 1回2錠1日1回朝食後の処方があります。

もし1回1錠へ減量した場合は、それだけで残薬となります。

また一包化になっている薬の処方変更も残薬となる原因になります。

例えば、ワーファリンのような、こまめな用量調節が必要な薬剤が一包化になってしまうと、次の外来受診時にもし用量変更となった場合は、前回残っていた残薬を使うことができなくなってします。

もちろん、減量ならば一包化から抜けばいいのですが、なかなか手間がかかるため難しいところもあります。

患者さんのライフスタイルに合わせた用法になっていない

次に患者さんの内服タイミングと指示された用法のタイミングがあっていない場合です。

例えば、内服している患者さんが夜勤の仕事をメインでやられている方だとしましょう。

薬の処方が

ロキソプロフェン60mg    1日1回1回1錠昼食後
ランソプラゾール錠15mg 1日1回1回1錠就寝前
フロセミド20m g             1日1回1回1錠朝食後

ランソプラゾールは、患者さんのライフスタイルが夜間勤務をされていると、どうしても内服時間と勤務時間がぶつかるので、内服することができません。

そこで例えば

おそらくロキソニンが昼に出ているのは日中に痛みが出てくることがあると予想されるので

ロキソプロフェン60mg    1日1回1回1錠昼食後
ランソプラゾール錠15mg 1日1回1回1錠食後→就寝前を昼に
フロセミド20m g             1日1回1回1錠朝食後

などに用法をまとめることで残薬対策ができると思います。

このように確実に飲む時間に用法を統一させるのも残薬を減らす方法です。

患者さんの中には、朝食後を取ってないから、朝食後に飲めないという方もいるので、その場合は食後に飲む必要性のないものは、朝食前などに変更することで残薬対策になると思います。

内服の自己中断してしまう

自己中断

たまーに患者さんでいらっしゃるのが自己判断で内服中断をするパターンです。

下剤や痛み止めなど調整できるものならいいのですが、必ず飲んで欲しいものを勝手に自己判断してやめてしまう方がいらっしゃいます。

さらに、患者さん本人が考え納得して決めたことなので、内服再開するのにも説得が非常に難しいというのが悩ましいところです。

このような患者さんには、言葉を簡単にした上で、なぜこの薬が処方され、飲むことになったのか時間をかけて説明する必要があります。

例をあげると気管支喘息やCOPDに使用される吸入薬です。

発作が落ち着いているから吸入しなくていいだろうと自己完結してしまう患者さんが多く、発作が起きないように予防するために吸入薬を使用していることを時間をかけて繰り返し伝えることでなんとか納得してもらいます。

やはり症状が目に見えないと自己中断してしまう傾向にあります。

薬が残った理由について詳しく聞くことで対策が可能に

いかがだったでしょうか?

今回は患者さんの飲み忘れ以外で残薬が生じる理由について解説しました。

最後にもう一度理由をあげると

飲み忘れ以外で残薬が生じる理由

①常用薬を入院中に持参されない

②残薬調整という言葉を知らない、もしくは言い出せない

用法用量の変更や一包化になっている薬の処方変更


④患者さんのライフスタイルに合わせた用法になっていない

⑤自己中断してしまう

このように残薬になる理由は必ずあります。

例えば飲み方とライフスタイルが合わない、先日入院して残薬が生じてしまったなど患者さんに詳しく聞き出すことで、残薬解消につながると思います。

以上です。

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