こんにちは、イバスタです。

明日、初めての抗がん剤調整だ。
失敗したらどうしよう…
どこを注意したらいいかな?
このような悩みについて取り上げたいと思います。
今回の記事では、まだ抗がん剤調整をしたことのない薬剤師さん。
抗がん剤調整時にどこを注意したらよいか気になる薬剤師さんに向けた記事になります。
コンテンツ
抗がん剤調整で気をつけること5選

抗がん剤調整で注意することについて書いてみます。
今回は特に起こりやすい5つをピックアップしてみました。
- 溶解に注意する必要がある薬剤がある
- 薬剤によっては全量指定がある
- 時間制限のある薬剤がある
- 遮光が必要な薬剤がある
- インラインフィルター指定の薬剤がある
このように抗がん剤調整には様々な過程で落とし穴があります。

抗がん剤調整をすると
— イバスタ@グングン上昇⤴︎↗︎薬剤師 (@ibastration) August 26, 2020
全量調整(全量500mlに)とか注射用水3mlで溶解とか
指定があるわけですよ。
通常時は冷静なので問題ないんですけど、
何件も混注が重なると、焦るわけですよ
大体その時にやらかすんですよね
1V何万円のものが無駄になるんです
今日やらかしたんですよ
わたし

長く抗がん剤調整の経験を積めばミスは減ってきますが、
なぜこんなところで調整ミスを??
という経験は何度もあります。
では早速見ていきましょう!
溶解に注意する必要がある薬剤がある

1つ目にあげるのは、抗がん剤を輸液で溶解する時に起きやすいミスです。
抗がん剤の中にはバイアルの溶解方法や溶解量に指定があります。
例えば
ハーセプチン

これはハーセプチンに付属している溶解液(注射用水)で溶解します。
またハーセプチンには規格が60mg、150mgの2種類が存在していて
60mgには3ml、150mgには7.2mlで溶解することとなっています。
他の薬剤では、非小細胞肺癌で用いられるアリムタが溶解する量に指定があります。
アリムタでは100mgのバイアルに対して生理食塩液4.2mlで溶解します。
もちろん調整時に落ち着いていればミスがないのかもしれません。
問題なのは抗がん剤調整が忙しくなった時です。
例えばハーセプチンを生理食塩液(本当は注射用水)で溶解してしまったり、
間違えて、60mgのバイヤルに本来150mg用の注射用水(7.2ml)を入れてしまう可能性があります。
焦っている時に複数のバイアルを取り扱っていると取り違える可能性があるので特に注意が必要です。
分子標的薬などの抗体製剤は溶解時に激しく振盪させてしまうと泡立ってしまうので注意が必要です。
その代表的な薬剤が
アブラキサンです。
添付文書を見てみますと
本剤の添加物の人血清アルブミンは、ヒトの血漿(採血
国:米国、採血方法:非献血)を原材料としている。
アブラキサン添付文書より引用
このようにアブラキサンは人血清アルブミンにパクリタキセルを結合させた医薬品になります。
そもそもパクリタキセルは、水に溶けにくく、アルコールと油を使って溶かしていました。
パクリタキセル1回分の投与で
ビール500ml程度のアルコール摂取となります

パクリタキセル投与前には
必ず患者さんにアルコール過敏症かどうかの確認を行います。
またパクリタキセル投与前にはアレルギー症状防止のため、ステロイド薬、抗ヒスタミン薬などを投与する必要がありました。
しかしアブラキサンはこのような問題を解決し、生理食塩液で溶解することが可能になっております。
ただし、
アブラキサンの調整には特に注意が必要です。
1バイアル当たり生理食塩液20mLをバイアルの内壁伝いに、直接、
内容物にかけないよう泡立ちに注意しながらゆっくりと注入する。
(この操作は、泡立ちの発生を最小限にするため重要である。)
アブラキサン添付文書より引用

バイアルに勢いよく生食を入れてしまうと、すぐ泡立つので
かなり慎重に注入します。
内容物が十分に濡れたら、均一な白色ないし黄色の懸濁液になるま
で、静かに円弧を描くように回したり、緩やかに上下に転倒を繰り返
して混和する。(泡立ちに注意する。)
アブラキサン添付文書より引用


アブラキサンは溶解するのに、
かなり時間がかかります。
(場合によっては20分以上)
調製した懸濁液は必要量をバイアルから抜き取り、事前に用意した空の点滴バッグ等にゆっくりと注入する。
アブラキサン添付文書より引用

さらに、輸液ボトルは空にする必要があるので、輸液ボトルから生食を全て抜く作業もあり、かなり時間と手間がかかります。
このように、アブラキサンは添加物であるアルブミンが簡単に泡立ってしまうので、とても慎重に調整をする必要があります。
また厄介なのが、溶解する時、振盪し続けておかないと
ダマになると余計に溶解に時間がかかります
なので、ダマにならないようにゆっくりと振盪を続けておく必要があります。
簡単にまとめると
- 1バイアルあたり20mlで溶解
- 非常にゆっくりと混和する
- 空の点滴バッグに注入する
このようにアブラキサンには溶解時に様々な注意点があり、かつ振盪には特に慎重になる必要があります。

忙しい時にアブラキサンのオーダーが来てしまうと、
以下に焦らないで自分のペースでやれるかがポイントです。
薬剤によっては全量指定がある
トレアキシンには最終投与量(全体の輸液量)が存在します。
100mg製剤の場合には1バイアルあたり 40mL、 25mg製剤
の場合には1バイアルあたり 10mLの注射用水で溶解する。
患者の体表面積から換算した投与量を生理食塩液で希釈し、
最終投与液を 250mLに調製すること。
トレアキシン添付文書より
トレアキシンは1バイアルあたり40mlの注射用水で溶解し、最終投与量を250mlに調整する必要があります。
例えば、トレアキシンを60ml入れたい場合、生理食塩液からあらかじめ60mlを抜いておく必要があります。
これをやらないと、全量が変わってしまいますので、最悪の場合使用できすに破棄になってしまいます。
もしミスをするとかなりの損失になる可能性がありますので注意して調整したいものです。
今はトレアキシン点滴静注液100mgがありますので、このような問題は解消されています。
時間制限のある薬剤がある

抗がん剤の中には時間制限のある薬剤があります。
例えばビダーザやトレアキシンです。
ビダーザでは
本剤は用時調製し、調製から1時間以内に投与を終了する
こと[安定性が低下するため]
ビダーザ添付文書より引用
トレアキシンでは
調製後は、3時間以内に投与を終了すること。
トレアキシン添付文書より引用
このように、投与時間に制限があります。
もし患者さんが点滴投与前に点滴ルートを自己抜去してしまった、ルートが上手く取れなかったといったアクシデントがあるとすぐに1時間経過してしまうので注意が必要な薬剤です。
実際のところ、調整後に病棟へ払い出し、そこから看護師さんが準備をして点滴開始までに15分近くかかってしまうので、残った45分で点滴を終了させないといけません。
なのでちょっとしたアクシデントでも1時間すぎる可能性があるので、調整前には事前連絡などの必要性があります。
遮光が必要な薬剤がある

シスプラチンには遮光投与の記載があります。
本剤投与時、投与量に応じて500~1,000mLの生理食
塩液又はブドウ糖-食塩液に混和し、2時間以上かけ
て点滴静注する。なお、点滴時間が長時間に及ぶ場
合には遮光して投与すること。
ランダ注添付文書より引用
これはシスプラチンが光によって分解されてしまうからです。
そのためシスプラチンは遮光して投与します。
またホジキンリンパ腫に使用するABVD療法の一つであるダカルバジンでは
溶解後、更に希釈する場合には日局生理食塩液又は
日局5%ブドウ糖注射液を用いる。
なお、希釈後も遮光し速やかに使用すること。
ABVD療法
ダカルバジンを使用する場合は輸液だけでなく、なんと点滴ルート全体も遮光します。
遮光する理由は、
薬剤の分解による効力低下と、光分解による血管痛を引き起こす物質の生成させないためです。
このように輸液や点滴ルートへの遮光を忘れてしまうと効果の低下や患者さんへの有害事象が発生する可能性があるので注意が必要です。
インラインフィルター指定の薬剤がある
薬剤によってインラインフィルター装着の指示が添付文書にありますが、時折その指示を見落とすリスクがあります。
パクリタキセルを初め、ここ最近ではPD-1製剤であるオプジーボにインラインフィルターの指示があります。
まずパクリタキセルには添付文書より
本剤の希釈液は,過飽和状態にあるためパクリタキセルが結晶として析出する可能性があるので,本剤投与時には,0.22ミクロン以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを通して投与すること。
タキソール注射液添付文書より引用
このように析出した結晶が血管内にいかないようにするためにインラインフィルターを装着します。
またオプジーボでは
高分子の抗体製剤であり、溶解時に激しく振盪(しんとう)すると凝集体が生成する可能性がある
オプジーボ点滴静注市販直後調査より引用
このためオプジーボはインラインフィルターを使用する必要があるんですね。
一方でアバスチンやリツキサンと言った製剤にはインラインフィルターの装着についての記載はないです。
このように分子標的薬でもインラインフィルターを使用するものと使用しないものに分かれているので、慣れていないと間違ってつけてしまったりつけ忘れのリスクがあります。
最後に:抗がん剤調整は決して焦らないこと

今回は抗がん剤調整中に気を付けることを5つ取り上げました。
もしかしたらこんなことあり得ないだろうなと思うミスの例もあったかと思います。
しかし、
これらは全ていつ起きてもおかしくないミスなのです。
例えば

患者さん「まだ来ないのか?」
って怒っているんですけど、
まだ完成しないんですか??

今調整中してます!
すぐにできますので待っていてください。
あっ!

間違って、別な輸液に入れてしまった…….
(全てがこういう状況ではないですが)このように、急かされてしまった場合、精神的に余裕がなくなり、焦ってミスをする可能性は日常的にあります。
確かに患者さんを持たせるのは申し訳ないのですが
我々がやらなければならないのは
スピードを意識することよりもミスをしせず1つずつ確実に処理をしていくことです。
ミスすることによって、患者さんの待ち時間が余計長くなるばかりか、高い抗がん剤を無駄にするわけですから、焦りそうになったら一度抗がん剤調整のをやめて、息を整えて落ち着いてから調整を再開するようにするのが良いかと思います。
抗がん剤調整は決して焦ってはいけません。
1つずつ確実にこなしていきましょう。
以上です。

